不安を安心に変えるコラム
姿勢が悪いと腰痛が起こる?

腰痛にお悩みの方の多くは、「悪い姿勢」が痛みに大きく影響していると考えています。しかし、姿勢の悪さと痛みとの間には関連性はあるのでしょうか。また、痛みのある人とない人では姿勢に違いはあるのでしょうか。今回は、姿勢と痛みの関連性についてお伝えしていきます。

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姿勢が悪いと腰痛が起こる?

腰痛にお悩みの方の多くは、「悪い姿勢」が痛みに大きく影響していると考えています。しかし、姿勢の悪さと痛みとの間には関連性はあるのでしょうか。また、痛みのある人とない人では姿勢に違いはあるのでしょうか。今回は、姿勢と痛みの関連性についてお伝えしていきます。

姿勢が悪いと腰痛が起こる?

悪い姿勢は痛みの原因ですか?

私たちの多くは、幼い頃から「猫背ではなく、真っ直ぐに座ることが大切だ」と、姿勢の重要性について教えられてきました。

背筋をピンと伸ばし、顎を引き、肩を後ろに引いた理想的な「正しい姿勢」は、肩こりや腰痛を予防・改善するために重要であると考えられ、現在も多くの人や医療従事者に支持されています。

しかし、そもそも「正しい姿勢」とは何でしょうか?

直立不動の軍隊のような「正しい姿勢」を維持することで、本当に肩や腰の痛みが軽減したり、再発を予防することができるのでしょうか。

誰もが理想的な正しい姿勢を続けることがいいと信じている一方で、実は、このような不良姿勢と痛みとの関連性がそれほど強くないことを示す研究も多く存在します。

まず、頚椎の湾曲と首の痛みの関連性を調べた研究では、痛みの持続時間、頻度、強度、放散痛、感覚/運動障害、障害、医療利用、といった臨床的特徴と、全体的な頚部の曲率または分節角度との間に関連性が見られなかったことが報告されています。

また、姿勢と首の痛みの関連性を調べた研究によると、思春期後期の女性は、まっすぐな姿勢で座っている場合に比べて、前かがみの姿勢で座っている場合の方が、成人になってから慢性的な首の痛みを経験するリスクが低いことが判明しました。

脊柱の曲線と背中の痛みを含む健康状態との関連性を調べた研究では、胸椎後弯の程度が増しても、肩の痛み、腰痛、または背中の障害の可能性は増加しないことが示されました。

急性腰痛患者50名、慢性腰痛患者50名、健康なグループ50名を対象に脊椎の姿勢を調べた研究では、年齢や体重の増加に伴って姿勢が変化するものの、痛みに関しては3グループのいずれの姿勢にも大きな違いは認められなかったと報告されています。

これらの研究は、姿勢と痛​​みの間に密接な関連がなく、臨床的に重要ではない可能性が高いことを示しています。


その他の姿勢に関する研究

  • 重度の腰痛がある男性71名、中等度の腰痛がある男性144名、または腰痛のない男性106名、計321名において、腰椎前弯または脚長差に有意な差は見られませんでした (Pope 1985)。
  • 姿勢の非対称性、胸椎湾曲、または腰椎湾曲が過剰な10代の若者は、「姿勢が良い」同年代の若者と比べて、成人後に腰痛を発症する可能性が高くありませんでした (Dieck 1985)。
  • 10件の研究をレビューした結果、胸椎後弯症と肩の痛みの間に相関関係は見つからず、胸椎後弯症は肩の痛みの発症に重要な原因ではない可能性があります。 (Barrett 2016)。
  • 妊娠中に腰部湾曲が大きく増加した妊婦は、腰痛を発症する可能性が高くありませんでした (Franklin 1998)。
  • 65~91歳の女性グループでは、重度の脊柱後弯症の女性に腰痛や障害は見られませんでした (Ettinger 1994)。

背中を曲げると腰痛が起こる?

悪い姿勢が腰痛を引き起こすとすれば、腰痛のない健康な人は「正しい姿勢」をとっているはずですが、本当に腰痛のない人は正しく座っているのでしょうか。

腰痛のない健康な人50人を対象に座位と立位の姿勢を比較したこの研究では、無症状の人が10分間座っている姿勢は、立っている姿勢に比べ脊柱の角度は腰椎で24度、胸腰椎で12度、背中を丸めて座っていたことが示されました。

私たちの日常生活の多くは、車からゴルフクラブを取り出す、キッチンの下の引き出しから何かを取り出す、庭の花壇の手入れをするなど、「背中を曲げた姿勢」にする必要がありますが、

「腰に負担がかかるので背中を曲げてはいけない」
「持ち上げる時は、膝を曲げて背中を真っ直ぐに」

腰痛に悩む多くの人は、このようなアドバイスにより背中を曲げる動作は脊椎や椎間板を損傷する可能性が高くなると考え、背中を曲げる動作をなるべく避けようとします。

しかし、背中を曲げるといった特定の姿勢や動作を避ける予防策は、有益というよりむしろ有害である可能性が高く、腰痛のリスクを軽減する最善の方法ではありません。

最近の研究では、背筋を伸ばし膝を使って持ち上げようとする人は、自信を持って持ち上げる人よりも腰痛を経験することが多いということがわかっています。

肉体労働者198人 (男性115人、女性83人) を対象に、体幹の前屈の持続時間と腰痛との関連性を調べた研究では、前屈みの量と痛みの強さの間に関連がなかっただけでなく、背骨を30度以上曲げる時間が長いほど、腰痛の強さが弱まるという結果が出ました。

私たちの身体は様々な負荷に適応し、曲げたり持ち上げたりできるように作られています。何かを持ち上げたり、背中を曲げたりすることに不安を感じる必要はありません。


その他の姿勢に関する研究

  • 仕事中に座っていることは腰痛と関連がありません (Hartvigsen 2010)。
  • 35 件の研究の体系的なレビューにより、重量物を持ち上げる必要がある職業は腰痛を引き起こさない可能性が高いことが判明しました (Wai 2010)。
  • 99 件の研究の体系的なレビューでは、腰痛と、不自然な姿勢、持ち上げ、曲げ、捻りを伴う職業との間に因果関係を示す確かな証拠は見つかりませんでした (Kwon 2011)。
  • 日常的に重いものを持ち上げる必要がある職業では腰痛のリスクが高くなりますが、その影響の大きさはわずかです (Waddell 2001)。

椎間板への負担は腰痛を引き起こしますか?

腰痛に関する誤解は非常に多く、その一つとして、「脊椎は傷つきやすい脆弱な構造であり、腰を曲げることは腰椎にとって危険なため避けるべきである」という考えがあります。

スウェーデン生まれの整形外科医、アルフ・ナッケムソンが行った、姿勢によって腰椎椎間板内の圧力が増減する可能性があることを示す有名な研究があります。

これは、「立った時の腰の負担を100とした場合、座った時は1.4倍、デスクワークで前かがみになる場合は1.85倍もの負荷が椎間板にかかる」というものです。 

この座っていると立っている時よりも椎間板に大きな負荷がかかることが報告されて以来、「座っていると椎間板に負荷がかかり腰痛のリスクが増す」という考え方が広く受け入れられてきました。

しかし、現在の研究では、座位での椎間板内圧は椎間板に脅威を与える可能性は低く、椎間板変性や腰痛の発生に関しては、座位は立位よりも悪くないことや、前かがみになって座っている時の椎間板内圧は、立っている時の圧力と同程度であることが多いことが示されています。

また、座位が立位よりも腰痛の発症に関与する場合、そのメカニズムは椎間板内圧の上昇によるものではないと、これまでの見解が正しくない可能性を示唆しています。

ちなみに、ナッケムソンは後に次のように語っています。

「この研究は、生体力学的負荷が増加すると痛みが増すという根拠として誤解されています。この研究は、体のさまざまな姿勢で腰椎が通常の生理学的負荷にどのように反応するかを示しただけであり、痛みが実際にどこから来るのかについて示しているものではありません

どうして姿勢と痛みとの間に関連性がないの?

悪い姿勢と腰痛との間に関連性がない理由の一つは、人間の骨の形状や大きさには個人差があり、誰もがそれぞれ独自の構造を持っているということです。

実際の人間の骨格を見ると、骨の形状や大きさに大きな違いがあることが分かります。

骨の形や大きさは、最も効率的で快適な立ち方や座り方を決定しますので、ある人にとって最適な姿勢が別の人にとっても最適な姿勢とは限りません。

つまり、背筋を伸ばした「正しい姿勢」が腰痛を防ぐわけでもなく、猫背のような「悪い姿勢」が必ずしも腰痛の原因になるとは限らないのです。

また、多くの場合その関連性は逆になります。猫背などの特定の不良姿勢が直接痛みにつながるわけではなく、痛みがある人は良い姿勢を維持するのが難しくなるのです。

では、解決策はあるのでしょうか?

それは、「体を動かすこと」です。

痛みや不快感を引き起こすのは、「姿勢そのもの」ではなく、その姿勢で過ごす「時間」です。

つまり、「活動不足」です。

定期的に姿勢を変え、さまざまな筋肉を動かすことで、私たちの体は最もよく機能します。

腰痛でお悩みの方は、特定の「正しい姿勢」に固執するよりも、活動的な生活、十分な睡眠、健康的な食事など、体全体の健康に気を配ることに重点を置いてみてはいかがでしょうか。

悪い姿勢は痛みの原因ですか?

私たちの多くは、幼い頃から「猫背ではなく、真っ直ぐに座ることが大切だ」と、姿勢の重要性について教えられてきました。

背筋をピンと伸ばし、顎を引き、肩を後ろに引いた理想的な「正しい姿勢」は、肩こりや腰痛を予防・改善するために重要であると考えられ、現在も多くの人や医療従事者に支持されています。

しかし、そもそも「正しい姿勢」とは何でしょうか?

直立不動の軍隊のような「正しい姿勢」を維持することで、本当に肩や腰の痛みが軽減したり、再発を予防することができるのでしょうか。

誰もが理想的な正しい姿勢を続けることがいいと信じている一方で、実は、このような不良姿勢と痛みとの関連性がそれほど強くないことを示す研究も多く存在します。

まず、頚椎の湾曲と首の痛みの関連性を調べた研究では、痛みの持続時間、頻度、強度、放散痛、感覚/運動障害、障害、医療利用、といった臨床的特徴と、全体的な頚部の曲率または分節角度との間に関連性が見られなかったことが報告されています。

また、姿勢と首の痛みの関連性を調べた研究によると、思春期後期の女性は、まっすぐな姿勢で座っている場合に比べて、前かがみの姿勢で座っている場合の方が、成人になってから慢性的な首の痛みを経験するリスクが低いことが判明しました。

脊柱の曲線と背中の痛みを含む健康状態との関連性を調べた研究では、胸椎後弯の程度が増しても、肩の痛み、腰痛、または背中の障害の可能性は増加しないことが示されました。

急性腰痛患者50名、慢性腰痛患者50名、健康なグループ50名を対象に脊椎の姿勢を調べた研究では、年齢や体重の増加に伴って姿勢が変化するものの、痛みに関しては3グループのいずれの姿勢にも大きな違いは認められなかったと報告されています。


その他の姿勢に関する研究

  • 重度の腰痛がある男性71名、中等度の腰痛がある男性144名、または腰痛のない男性106名、計321名において、腰椎前弯または脚長差に有意な差は見られませんでした (Pope 1985)。
  • 姿勢の非対称性、胸椎湾曲、または腰椎湾曲が過剰な10代の若者は、「姿勢が良い」同年代の若者と比べて、成人後に腰痛を発症する可能性が高くありませんでした (Dieck 1985)。
  • 10件の研究をレビューした結果、胸椎後弯症と肩の痛みの間に相関関係は見つからず、胸椎後弯症は肩の痛みの発症に重要な原因ではない可能性があります。 (Barrett 2016)。
  • 妊娠中に腰部湾曲が大きく増加した妊婦は、腰痛を発症する可能性が高くありませんでした (Franklin 1998)。
  • 65~91歳の女性グループでは、重度の脊柱後弯症の女性に腰痛や障害は見られませんでした (Ettinger 1994)。

これらの研究は、姿勢と痛​​みの間に密接な関連がなく、臨床的に重要ではない可能性が高いことを示しています。

背中を曲げると腰痛が起こる?

悪い姿勢が腰痛を引き起こすとすれば、腰痛のない健康な人は「正しい姿勢」をとっているはずですが、本当に腰痛のない人は正しく座っているのでしょうか。

腰痛のない健康な人50人を対象に座位と立位の姿勢を比較したこの研究では、無症状の人が10分間座っている姿勢は、立っている姿勢に比べ脊柱の角度は腰椎で24度、胸腰椎で12度、背中を丸めて座っていたことが示されました。

私たちの日常生活の多くは、車からゴルフクラブを取り出す、キッチンの下の引き出しから何かを取り出す、庭の花壇の手入れをするなど、「背中を曲げた姿勢」にする必要がありますが、

「腰に負担がかかるので背中を曲げてはいけない」
「持ち上げる時は、膝を曲げて背中を真っ直ぐに」

腰痛に悩む多くの人は、このようなアドバイスにより背中を曲げる動作は脊椎や椎間板を損傷する可能性が高くなると考え、背中を曲げる動作をなるべく避けようとします。

しかし、背中を曲げるといった特定の姿勢や動作を避ける予防策は、有益というよりむしろ有害である可能性が高く、腰痛のリスクを軽減する最善の方法ではありません。

最近の研究では、背筋を伸ばし膝を使って持ち上げようとする人は、自信を持って持ち上げる人よりも腰痛を経験することが多いということがわかっています。

肉体労働者198人 (男性115人、女性83人) を対象に、体幹の前屈の持続時間と腰痛との関連性を調べた研究では、前屈みの量と痛みの強さの間に関連がなかっただけでなく、背骨を30度以上曲げる時間が長いほど、腰痛の強さが弱まるという結果が出ました。

私たちの身体は様々な負荷に適応し、曲げたり持ち上げたりできるように作られています。何かを持ち上げたり、背中を曲げたりすることに不安を感じる必要はありません。

椎間板への負担は腰痛を引き起こしますか?

腰痛に関する誤解は非常に多く、その一つとして、「脊椎は傷つきやすい脆弱な構造であり、腰を曲げることは腰椎にとって危険なため避けるべきである」という考えがあります。

スウェーデン生まれの整形外科医、アルフ・ナッケムソンが行った、姿勢によって腰椎椎間板内の圧力が増減する可能性があることを示す有名な研究があります。

これは、「立った時の腰の負担を100とした場合、座った時は1.4倍、デスクワークで前かがみになる場合は1.85倍もの負荷が椎間板にかかる」というものです。 

この座っていると立っている時よりも椎間板に大きな負荷がかかることが報告されて以来、「座っていると椎間板に負荷がかかり腰痛のリスクが増す」という考え方が広く受け入れられてきました。

しかし、現在の研究では、座位での椎間板内圧は椎間板に脅威を与える可能性は低く、椎間板変性や腰痛の発生に関しては、座位は立位よりも悪くないことや、前かがみになって座っている時の椎間板内圧は、立っている時の圧力と同程度であることが多いことが示されています。

また、座位が立位よりも腰痛の発症に関与する場合、そのメカニズムは椎間板内圧の上昇によるものではないと、これまでの見解が正しくない可能性を示唆しています。

ちなみに、ナッケムソンは後に次のように語っています。

「この研究は、生体力学的負荷が増加すると痛みが増すという根拠として誤解されています。この研究は、体のさまざまな姿勢で腰椎が通常の生理学的負荷にどのように反応するかを示しただけであり、痛みが実際にどこから来るのかについて示しているものではありません

どうして姿勢と痛みとの間に関連性がないの?

悪い姿勢と腰痛との間に関連性がない理由の一つは、人間の骨の形状や大きさには個人差があり、誰もがそれぞれ独自の構造を持っているということです。

実際の人間の骨格を見ると、骨の形状や大きさに大きな違いがあることが分かります。

骨の形や大きさは、最も効率的で快適な立ち方や座り方を決定しますので、ある人にとって最適な姿勢が別の人にとっても最適な姿勢とは限りません。

つまり、背筋を伸ばした「正しい姿勢」が腰痛を防ぐわけでもなく、猫背のような「悪い姿勢」が必ずしも腰痛の原因になるとは限らないのです。

また、多くの場合その関連性は逆になります。猫背などの特定の不良姿勢が直接痛みにつながるわけではなく、痛みがある人は良い姿勢を維持するのが難しくなるのです。

では、解決策はあるのでしょうか?

それは、「体を動かすこと」です。

痛みや不快感を引き起こすのは、「姿勢そのもの」ではなく、その姿勢で過ごす「時間」です。

つまり、「活動不足」です。

定期的に姿勢を変え、さまざまな筋肉を動かすことで、私たちの体は最もよく機能します。

腰痛でお悩みの方は、特定の「正しい姿勢」に固執するよりも、活動的な生活、十分な睡眠、健康的な食事など、体全体の健康に気を配ることに重点を置いてみてはいかがでしょうか。

腰痛にお悩みの方の多くは、「悪い姿勢」が痛みに大きく影響していると考えています。しかし、姿勢の悪さと痛みとの間には関連性はあるのでしょうか。また、痛みのある人とない人では姿勢に違いはあるのでしょうか。今回は、姿勢と痛みの関連性についてお伝えしていきます。

悪い姿勢は
痛みの原因ですか?

私たちの多くは、幼い頃から「猫背ではなく、真っ直ぐに座ることが大切だ」と、姿勢の重要性について教えられてきました。

背筋をピンと伸ばし、顎を引き、肩を後ろに引いた理想的な「正しい姿勢」は、肩こりや腰痛を予防・改善するために重要であると考えられ、現在も多くの人や医療従事者に支持されています。

しかし、そもそも「正しい姿勢」とは何でしょうか?

直立不動の軍隊のような「正しい姿勢」を維持することで、本当に肩や腰の痛みが軽減したり、再発を予防することができるのでしょうか。

誰もが理想的な正しい姿勢を続けることがいいと信じている一方で、実は、このような不良姿勢と痛みとの関連性がそれほど強くないことを示す研究も多く存在します。

まず、頚椎の湾曲と首の痛みの関連性を調べた研究では、痛みの持続時間、頻度、強度、放散痛、感覚/運動障害、障害、医療利用、といった臨床的特徴と、全体的な頚部の曲率または分節角度との間に関連性が見られなかったことが報告されています。

また、姿勢と首の痛みの関連性を調べた研究によると、思春期後期の女性は、まっすぐな姿勢で座っている場合に比べて、前かがみの姿勢で座っている場合の方が、成人になってから慢性的な首の痛みを経験するリスクが低いことが判明しました。

脊柱の曲線と背中の痛みを含む健康状態との関連性を調べた研究では、胸椎後弯の程度が増しても、肩の痛み、腰痛、または背中の障害の可能性は増加しないことが示されました。

急性腰痛患者50名、慢性腰痛患者50名、健康なグループ50名を対象に脊椎の姿勢を調べた研究では、年齢や体重の増加に伴って姿勢が変化するものの、痛みに関しては3グループのいずれの姿勢にも大きな違いは認められなかったと報告されています。


その他の姿勢に関する研究

  • 重度の腰痛がある男性71名、中等度の腰痛がある男性144名、または腰痛のない男性106名、計321名において、腰椎前弯または脚長差に有意な差は見られませんでした (Pope 1985)。
  • 姿勢の非対称性、胸椎湾曲、または腰椎湾曲が過剰な10代の若者は、「姿勢が良い」同年代の若者と比べて、成人後に腰痛を発症する可能性が高くありませんでした (Dieck 1985)。
  • 10件の研究をレビューした結果、胸椎後弯症と肩の痛みの間に相関関係は見つからず、胸椎後弯症は肩の痛みの発症に重要な原因ではない可能性があります。 (Barrett 2016)。
  • 妊娠中に腰部湾曲が大きく増加した妊婦は、腰痛を発症する可能性が高くありませんでした (Franklin 1998)。
  • 65~91歳の女性グループでは、重度の脊柱後弯症の女性に腰痛や障害は見られませんでした (Ettinger 1994)。

これらの研究は、姿勢と痛​​みの間に密接な関連がなく、臨床的に重要ではない可能性が高いことを示しています。

背中を曲げると
腰痛が起こる?

悪い姿勢が腰痛を引き起こすとすれば、腰痛のない健康な人は「正しい姿勢」をとっているはずですが、本当に腰痛のない人は正しく座っているのでしょうか。

腰痛のない健康な人50人を対象に座位と立位の姿勢を比較したこの研究では、無症状の人が10分間座っている姿勢は、立っている姿勢に比べ脊柱の角度は腰椎で24度、胸腰椎で12度、背中を丸めて座っていたことが示されました。

私たちの日常生活の多くは、車からゴルフクラブを取り出す、キッチンの下の引き出しから何かを取り出す、庭の花壇の手入れをするなど、「背中を曲げた姿勢」にする必要がありますが、

「腰に負担がかかるので背中を曲げてはいけない」
「持ち上げる時は、膝を曲げて背中を真っ直ぐに」

腰痛に悩む多くの人は、このようなアドバイスにより背中を曲げる動作は脊椎や椎間板を損傷する可能性が高くなると考え、背中を曲げる動作をなるべく避けようとします。

しかし、背中を曲げるといった特定の姿勢や動作を避ける予防策は、有益というよりむしろ有害である可能性が高く、腰痛のリスクを軽減する最善の方法ではありません。

最近の研究では、背筋を伸ばし膝を使って持ち上げようとする人は、自信を持って持ち上げる人よりも腰痛を経験することが多いということがわかっています。

肉体労働者198人 (男性115人、女性83人) を対象に、体幹の前屈の持続時間と腰痛との関連性を調べた研究では、前屈みの量と痛みの強さの間に関連がなかっただけでなく、背骨を30度以上曲げる時間が長いほど、腰痛の強さが弱まるという結果が出ました。

私たちの身体は様々な負荷に適応し、曲げたり持ち上げたりできるように作られています。何かを持ち上げたり、背中を曲げたりすることに不安を感じる必要はありません。

椎間板への負担は
腰痛を引き起こしますか?

腰痛に関する誤解は非常に多く、その一つとして、「脊椎は傷つきやすい脆弱な構造であり、腰を曲げることは腰椎にとって危険なため避けるべきである」という考えがあります。

スウェーデン生まれの整形外科医、アルフ・ナッケムソンが行った、姿勢によって腰椎椎間板内の圧力が増減する可能性があることを示す有名な研究があります。

これは、「立った時の腰の負担を100とした場合、座った時は1.4倍、デスクワークで前かがみになる場合は1.85倍もの負荷が椎間板にかかる」というものです。

この座っていると立っている時よりも椎間板に大きな負荷がかかることが報告されて以来、「座っていると椎間板に負荷がかかり腰痛のリスクが増す」という考え方が広く受け入れられてきました。

しかし、現在の研究では、座位での椎間板内圧は椎間板に脅威を与える可能性は低く、椎間板変性や腰痛の発生に関しては、座位は立位よりも悪くないことや、前かがみになって座っている時の椎間板内圧は、立っている時の圧力と同程度であることが多いことが示されています。

また、座位が立位よりも腰痛の発症に関与する場合、そのメカニズムは椎間板内圧の上昇によるものではないと、これまでの見解が正しくない可能性を示唆しています。

ちなみに、ナッケムソンは後に次のように語っています。

「この研究は、生体力学的負荷が増加すると痛みが増すという根拠として誤解されています。この研究は、体のさまざまな姿勢で腰椎が通常の生理学的負荷にどのように反応するかを示しただけであり、痛みが実際にどこから来るのかについて示しているものではありません

どうして姿勢と腰痛の
間には関連性がないの?

悪い姿勢と腰痛との間に関連性がない理由の一つは、人間の骨の形状や大きさには個人差があり、誰もがそれぞれ独自の構造を持っているということです。

実際の人間の骨格を見ると、骨の形状や大きさに大きな違いがあることが分かります。

骨の形や大きさは、最も効率的で快適な立ち方や座り方を決定しますので、ある人にとって最適な姿勢が別の人にとっても最適な姿勢とは限りません。

つまり、背筋を伸ばした「正しい姿勢」が腰痛を防ぐわけでもなく、猫背のような「悪い姿勢」が必ずしも腰痛の原因になるとは限らないのです。

また、多くの場合その関連性は逆になります。猫背などの特定の不良姿勢が直接痛みにつながるわけではなく、痛みがある人は良い姿勢を維持するのが難しくなるのです。

では、解決策はあるのでしょうか?

それは、「体を動かすこと」です。

痛みや不快感を引き起こすのは、「姿勢そのもの」ではなく、その姿勢で過ごす「時間」です。

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